もう一度、僕に恋をして。








「楓純くん、俺としよっか」



そして、次の瞬間とんでもないことを言い出した。





「はぁぁぁ?!」



僕は思わず声を荒らげる。



な、なんなの?この人…。


しよっかって…あれでしょ?


こんな雰囲気で、そんなこと言うのはあれしかない。


異性同士の恋人がするような……。


僕が凜菜に大事すぎて出来なかった“アレ”でしょ?



「っ…あはは!はははは!」



あまりの驚きっぷりに、折崎さんは堪えきれずといった様子で、笑い出した。



いやいやいやいや、笑い事じゃないだろ!!



だって、さっきから何度も言ってるけど!


僕と折崎さんは、正真正銘の“男同士”だ。



そんな、恋人たちがするような行為なんか―――。


絶対出来ない!



「まだ君には早いか、そうだよね……男同士の経験はないもんね」

「あ、当たり前ですよ!!」



正直、高校の終りから凜菜と付き合ってたし、女性ですらない僕にしてみれば、尚のことありえない。



「ふーん、じゃあ最初は慣らす必要があるね」

「はい?」

「こりゃ躾甲斐ありそう」

「はっ?!なっ…しつ…?!」




僕はさっきから、驚いてばかりだ。


なんだよ、躾って!


想像もつかない出来事に、不安と疑心は益々深く積もってゆく。




「折崎さんは僕に何をするつもりですか?」

「んー、なにをってナニをだよ?」

「は?!」




それ、回答になってません!


全然わかりません!



1+1は?って聞いて1+1だよって言われたのと同じくらい答えになってません!!





「あはは!本当に、純情っていうかウブ?なんだね」

「いや、意味がわかりませんが」

「大丈夫、慣れるよ」

「えっと…ごめんなさい、よくわかりません」

「最初は痛いかもね、でもそれが古い痛みを取るいい薬になるんだ」



なんだろう。


この人がしゃべる度にわからなくなってゆく。


思考回路に、この人の言った言葉たちが乱雑に絡み合ってこんがらがったイヤフォンのコードみたいになる。



ていうか、そもそも僕の中に解りたくないって思いがあるのかもしれない。


理解したくない。



してしまったら、本気で…僕はこの人を……嫌うかもしれない。



「お、折崎さん…お酒飲んでるし酔ってませんか?だから、変なこと言うんですよ」



あはは、と乾いた笑いをこぼして僕は折崎さんを見る。




「俺は酒強いんだ、滅多に酔わないよ?それに真剣だけど」

「…っ!」

「大丈夫、最初はそうだなぁ……キス、から始めようか?」

「…や、あの……折崎さん…僕は女性しか…っ!!」



“女性しか無理”そう言おうとしたのに、折崎さんは僕の唇に、人差し指を押し当てて阻止する。




意味がわからない。


こんがらがって、ぐちゃぐちゃで。


考えれば考えるほどわからなくなってゆく。