でも、右手はガッチリと僕の腰を掴んでいてビクともしなかった。
顔を逸らして避けるという手もあるけれど、左手で後頭部をこれまたガッチリと掴まれているため、動かせない。
折崎さんのキスは触れては離れて、また角度を変えては触れてくるという工程を何度も繰り返してきて、
息があがった。
甘い。
まるでホワイトチョコみたいだ。
何度も繰り返すから、次第に唇は湿り気を帯びてきて―――。
その音に、僕はたまらなく恥ずかしくなってきた。
そして、ようやく解放されたときには脳が麻痺したのかってほど、ボーッとして何も考えられなくなっていた。
「…はぁ、…はぁ」
触れるだけを繰り返すキスだったのに、荒々しくあがった吐息に、
折崎さんは唇を今度は僕の耳にくっつけるて、
「俺でいっぱいになればいいよ、そしたら消えるから、ね?」
そう言って、いやらしく妖艶な笑みを口元に浮かべた。
僕はその言葉に、思わず目を見張らせる。
「なっ、何言ってっ…僕は…男ですよ?!」
「そうだね、だから?」
「いや…だって!折崎さんだって男で……」
「忘れたいんでしょ?」
「っ!」
忘れたい。
消してしまいたい。
でも、嫌だ。
楽しかったあの日々を、無にはできない。
それに第一、僕等は“同性同士”だ。
さっきのキスですら、タブーなことなのに。
「と、とにかく!僕らは男で…だからダメっていうか…」
「君は可愛いね」
「はい?」
折崎さんの突拍子もない言葉に、思わず聞き返してしまう。
か、可愛いって…なに?
「目が潤んでる、ねぇ俺とキスして嫌だった?」
「は?」
「俺はね、うーんやっぱり言わない」
「あの…」
楽しそうに、まるで新しい玩具を買ってもらって喜ぶ子供みたいに、
好きなご主人様に撫でてもらって尻尾を振って喜ぶワンちゃんみたいに、笑う折崎さんは
僕の目をじっとまっすぐ見つめてくる。
