なんで…。


だって、あれは悪夢で―――。


僕と凜菜は――。




まだ、付き合っていて――。




「…り、な……」

「私の名前気安く呼ばないでよ、まじキモイ」

「ほら、早く出てけよ!」



何を言ってるんだ。


ここは僕ん家だよ?!


嘘だ。


また、悪夢を見ているんだ。


あれだ、よくあるあれ。



夢から覚めてまた夢で、繰り返すやつ。


早く本当に覚めてくれないかな。



「早くしろよ、未練タラタラ男!」

「消えてよ」

「…っ!…や、やめっ……っ!!」



もう…やめて。


これが夢なら覚めてくれ!!



「――るさ…ん」

「いやだっ…」

「―楓純さ…」

「やめてっ!!」


また、声がする。



怖い。


でも凜菜とあの昌樹って人の声じゃない。


でも、確かに声がする。



「楓純さん!!」

「うぁぁっ!!」




僕は恐怖による叫びと共にその声を手繰るように、身体を勢いよく起こした。



「…っはぁ…はぁ…」



叫んだせいか、息切れが激しい。


息がしにくい。



「楓純さん、大丈夫?」



僕が息を正していると、優しくて暖かみのある声が左側から聴こえて、そちらに視線をやる。



「折崎さん…」

「かなり魘されてたみたいだけど」

「えっと…すいません、嫌な夢を見てしまって」

「もしかして…元カノの夢?」

「えっ…」



折崎さんの言った“元カノ”という言葉に、ちくりと胸が傷んだ。



「魘されてたときに“凜菜”って何度も…言ってたから、そうかなって」