「いつも兄が…お世話になってます」
「いえいえ、むしろ俺のほうが君のお兄さんには仕事でもそれ以外でも助けてもらってばかりだよ」
「そうなんですか?」
「あぁ」
意外なことに、僕は「へぇ~あの兄貴が」と肯いていると、急に折崎さんは笑い出した。
「あの兄貴って…あっははは!よほど普段は違うんだね」
「はい、家事は苦手だしこの間なんか甘い卵焼きのつもりが塩と砂糖を間違えて作っちゃったんですよ?」
「えぇ?…計算ミスのない奏が?」
「そうなんですか?」
「うん、いつもパーフェクトでね」
「嘘…」
塩と砂糖を間違えるって、典型的なミステイクをする兄貴が…仕事ではパーフェクトなんて…。
逆に仕事がパーフェクトだから、日頃の生活ではパーフェクトじゃないんだろうか。
それにしても、想像もつかない。
「君はたしか、楓純…だっけ」
「あ、すいません…名前言ってなくて…楓純で合ってます」
しまった、僕としたことが。
そうおもいながら、折崎さんにぺこっと頭を下げて言うと、優しい柔らかな笑みを目尻に浮かべて
「良かった」
と、呟いた。
「あと、覚えててくれて…嬉しい」
