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夜7時半を回って、保育園にいっくんをお迎えに行った私は今、家への帰り道。



隣を蒼太先生が歩いてる。




「あの、何かすみません。。」



「いえっ。
帰る方向が一緒なので気にしないで下さい。」




ニコッと笑いながらそう小声で話す蒼太先生の背中にはスヤスヤ眠るいっくんがおんぶされている。



私が保育園についた頃には、遊び疲れてすでに寝落ちしてしまったいっくん。



起こそうとした私を止めて、蒼太先生は自分がおぶって送りますと、申し出てくれた。



さすがにそこまでは甘えられないと思って断ったけど、蒼太先生は譲らずで…今に至る。




隣を歩く、私よりはるかに背の高い蒼太先生を見上げる。



前をまっすぐ見て歩くその横顔は、嫌でも見つめてしまうくらい整ってて…




「いっくんママ?」



「あ、何でもないです。」




見つめていたら、いつの間にか蒼太先生が私の視線に気づいていた。


慌てて視線を逸らす。




「高間さん、ひとりでいっくんを育てて、仕事も頑張ってて…本当にすごいですよね。」




「えっ?」




突然そんな風に言われて、びっくりして横を見上げると蒼太先生はふわりと微笑んだ。




その瞬間、また胸がキュンとした。
あーも、ダメなのに。




「そ、そんなことないです。
私なんかよりもっとすごい頑張ってるシングルマザーの人いっぱい居ますよ。」




誤魔化すようにそう言って前を向く。
だって、そうだよ。
子供にいつも我慢させて、いい子にさせちゃってるなんて、全然すごくない。




「いっくんには、いつも寂しい思いをさせてるし、父親の代わりも出来てるのかどうか…」




この子と2人で生きていくと決めたとき、私は決心したの。


私はこの子の母親で父親にもなろうって。




「高間さんは十分頑張ってますよ。
それに他のお母さん達と自分を比べたらダメです。子どもも色んな子がいるように、お母さんも色んなお母さんがいるんですから。
いっくんママは、いっくんママです。」




「蒼太先生…」




私は自然と蒼太先生を見つめていた。



すると、我に帰ったように蒼太先生は慌てて謝る。




「あ、いや、
その…生意気言ってすみませんっ。」



「ん~…zzZ」




自分の声でいっくんが起きそうになって慌ててる蒼太先生を見たら、思わず笑ってしまった。




「ふふ、ありがとうございます蒼太先生。」



「あ、いえ、はい。。」




はにかむ蒼太先生。


はぁ。どうしよ、私好きかも、この人のこと。