「やっぱり、疲れてるじゃん。」
「ぐっすり寝ちゃってますね。」
家に帰ってソファーに下ろされた頃には、いっくんはすでに夢の中。
そんな天使の寝顔を蒼太先生と2人で眺めていた。
何となくその時間さえ幸せに感じた…
というか、このまま続けばいいのにって。
「あ、コーヒーでも飲みますか?」
キッチンへ行って、2人分のカップを取り出して用意していると…
ーーーーーーーギュッ。
不意に背中から抱きすくめられる。
あの日の体の感触を思い出して、胸が高鳴る。
「蒼太…先生?」
「ハァ…あの日から、ずっとこうしたかった。」
それが本音だと分かるくらいその声は、嬉しそうで…
私だって…
でも、あの日から蒼太先生…何にも言ってくれなかったじゃない。
だから、私は…
「蒼太先生、やめましょう?こういうの。
私にはいっくん…子供がいますし、恋愛してる時間なんてないんです。」
再婚がこの先にないのなら、私は蒼太先生とはこうしていたくない。
その温かい背中から逃れようとすると、その腕はさらに私を力強く縛りつけた。
「今日、ホントは偶然じゃないんです。
亜紀さんといっくんを待ってたんです。」
「え?何でっ?」
突然のカミングアウトにただただ驚く。
だって、今日水族館行くっていうのは私といっくんしか知らないのに。
「いっくんに誘われたんです。
『一緒に行こー』って。だから、俺今日来ちゃいました。」
「いっくんが…」
知らなかった…
だっていっくん、そんな素振り全然…
「俺、ホントに今日楽しかったです。
2人と一緒にいられて。」
「・・・//////」
それが本心なのかどうか分からなくて、でも嬉しくて照れるしかなくて。
「亜紀さん、俺…」
蒼太先生が何か言いかけたその時…
「ママ…?そーたせんせ?」
目を擦りながら、ぽてぽてとキッチンへ歩いてきたいっくん。
慌てて2人は離れた。
「どうしたの?起きちゃったね。」
目を擦るいっくんのそのままリビングへと誘導する。



