少しばかり寝てたみたいだ…


テーブルに突っ伏していた顔をあげると、何となくお酒の空瓶やおつまみのゴミが片付けてあった。



あれ?貴理子さん?
まだ少し酔いが覚めない目を擦りながら、見渡すと貴理子さんの姿が見えない。



あれ?帰っちゃったのかな…?



するとふと目に入ったのは、手書きのメモ。
それは、貴理子さんの達筆な字で…




『たまには肩の力抜いて、誰かに甘えて頼りなさいよ。』




そんな上司の優しい言葉が嬉しくて、頬が緩む。



と、その時…
ーーーーーーーピンポーン。。




ん?誰?
時計を見ると、夜の12時を回った所だった。



あ、もしかして貴理子さん追加のお酒を買いにいってたのかな。



でも、チャイムなんて鳴らさなくても入ってくれば…あ、もしや両手塞がるほど買い込んだ?



貴理子さんならあり得るなぁ。




私は何となく千鳥足で玄関へ向かうと、そのままドアを開けた。




「貴理子さ…



「高間さんっ!?大丈夫ですかっ??」




え………?


何で?




ドアを開けたそこに立っていたのは、貴理子さんじゃなかった。




「蒼太…せんせ?」




いつものジャージにエプロン姿じゃない私服姿の蒼太先生が息を切らして、どことなく心配そうな顔をして立っていた。




思ってもいなかった人の登場で、頭の中がプチパニック。



え?今、夜だよね?夜中だよね?
何で?蒼太先生がうちの前にいるの??



黙って見つめたままの私に、蒼太先生は息を整えると心配そうに声をかけた。





「あの、高間さんの仕事仲間っていう方から電話もらって…高間さんが大変なことになってるから、助けてあげてって。」




と、蒼太先生の話を聞いて状況が把握できた。


あー~…貴理子さん。。
勝手に私のスマホ使ったなぁ…。。




えっと…どうしよ。
あ、というか取り敢えず…




「あ、あの…取り敢えず、
どうぞ。上がって下さい。」



「えっと、はい。じゃあ、お邪魔します。」




夜中にこんな所で立ち話もなんだしと、蒼太先生を家に招き入れた。



取り敢えず、片付けてあったリビングのテーブルの前に座ってもらった。



そして、私も向かいに座ると頭を下げた。




「あの、ごめんなさいっ。
その…電話したその人と久しぶりにお酒呑んでて、なんというかイタズラしたみたいです。
私、ちょっと寝ちゃったみたいで。ちょっと酔っぱらってるだけで特に元気で…」




と、そこまで説明すると蒼太先生は“あー、良かった。。”そう言ってホッとした顔で私を見た。





「高間さんに何かあったかと思って…すごく心配で…」




「え…」





そんなに心配してくれたの?


何で?ただの園児の保護者なのに?