そして、その夜はわざわざいっくんをベットまで運んでくれた蒼太先生。




「蒼太先生、今日はほんとに助かりました。
ありがとうございました。」



深々とお礼を言うと、蒼太先生は玄関で靴を履き終えて立ち上がり…



「いいえ、ちょっとでもお役に立てて良かったです。」



「そんな、ちょっとなんて!
すごく助かりましたよ。」



「それなら良かったです。」



「はい。」



「あの高間さん、ホントに頑張りすぎないようにして下さいね?
たまには、息抜きも必要ですよ。…あ、また生意気なこと言っちゃいました。。」



「ふふ。…はい、分かりました。蒼太先生!」




蒼太先生って、見ててホントに癒される。
真剣な顔だと思ったら、しょんぼりしたり。
可愛いなぁ。





ーーーーーーーー…………




そんな日があった数日後の夜、蒼太先生が言ってくれたように私は貴理子さんをうちに呼んで久しぶりにお酒を飲んで息抜きをしていた。



なので、今夜はいっくんは私の実家に預かってもらってお泊まり。




「ホントに久しぶりねー。
こうやって、呑むの。ほらー、どんどん呑みなさーい。」



「も~貴理子さん、飛ばしすぎ。」



「いーじゃない。たまにの息抜きなんだから。
それで?あのイケメンパパは実は新任の先生だったと。」




すでにワイン1本を空けて、ご機嫌な貴理子さんは私の蒼太先生の話に興味津々。




「ちょうど良いじゃない。いっくん、パパが欲しいんでしょ?」



「何言ってるんですかぁー。いっくんの誕生日プレゼントの話と蒼太先生の話は別ですっ。
というか、蒼太先生とは絶対無理ですから。」



「あら、どうして?その先生、独身でしょ?」




チーズのおつまみを口に放り込みながら、何で?と当たり前のように聞く貴理子さん。


私も同じようにおつまみを口に放ると、ため息交じりに思ってることをこぼした。




「蒼太先生は年下でまだ若いし、こんなバツイチ子持ちのおばさんに興味ないですよ。それにいっくんだってパパなら誰でもいいって訳じゃないですし。」




そうそう。
いくら、私が蒼太先生をいいなって思っても結局はどうすることも出来ないんだよ。



蒼太先生が私に優しいなんて、そんな深く考えることじゃないんだよ。



蒼太先生は誰にも優しいから。




「だから、好きになっちゃダメ…なん、です…」



久しぶりに飲んだアルコールのせいもあって、途中から意識は途切れ途切れ…



何となく、私何言ってんだろうって思いながら喋ってたような気がする。



だから、




「全く、意地張っちゃって…。
世話が焼けるわね~。」




貴理子さんのそんな独り言も聞こえなかった。