「ちょっと桃華（とうか）！聞いてよ。あの新しい理科の教師ね、授業中だけ妙に声大きいのよ。」

１時限目が終わり、ハイテンションで近づいてきたのはあたしの親友、中澤乃愛（ナカザワノア）。

あたしとは違うクラスで、今の発言からすると萩原先生が理科の担当になったらしい。

しかも、声が大きいらしい。

いいと思うけどね、ちゃんと授業も理解しやすいと思うし。

「桃華聞いてる？あの教師、授業終わって話しかけたら冷たい眼差しを送ってきたの。いいえ、あれは眼差しじゃない。睨みよ、睨み。今日がこの学校初日だっていうのに、いきなり生徒をにらんで、ヤバいんじゃない、あの教師。」

どうやら乃愛は萩原先生が気に入らないらしい。

鼻息荒くして、眉間にしわを寄せて話してくる。

「うん、そうね。でも半年間だけなんでしょ、その先生が授業するの。我慢してたらいいじゃない。それに、どうせ授業聞いてないんでしょ、乃愛は。」

「ちょ、桃華。それ言わないで。歴史と理科は眠くて眠くて仕方がないだけだから。ほかの授業はちゃんと受けてるから。」

「うん、知ってる。ごめんね、ちょっと意地悪したくなっただけなの。」

あたしは乃愛をちょこっといじるのが大好きです。