ほどなくして漂いだしたいい匂いに私のお腹は元気に主張しだした。 「ほんと、欲望に忠実な女だな。 腹の虫くらい大人しくしとけよ」 「無理無理、すごいいい匂いするもん。わあっ、美味しそうー」 「……おだてたって何も出ねえぞ」 「ちっ」 いつもと変わらない会話、何もなかったかのような錯覚に陥る。 でも、頭でリピートされる将斗の少し低い、同僚ではない男の声 ――抱いたよ、俺はお前を――