均整がとれた、身体。
こちらに向けられた背中に、昨晩、爪を立てたのかと思うだけで変な気持ちになる。
少し焦り、目を逸らした。
目を逸らしたついでに辺りを見回す。
「…ここ、もしかしなくても将斗の部屋でしょ」
「そこも覚えてないのかよ」
ため息混じりで返事をした将斗を降り仰ぐと、そこには昨日と同じ将斗が立っていた。
違うのはいつも綺麗にセットされた髪の毛が、今日は乱れているところか。
セットされていない髪の毛だと少し幼く見えて
―――ちょっとキュンときたのは秘密だ。
「…人の顔見てにやけんな」
「別に、にやけてないし。それよりお腹空いた」
「はいはい、顔洗ってからそこに座って待ってれば?」
呆れたような笑顔を少し口元に浮かべた将斗のお言葉に甘え、洗面所を借りてから椅子に大人しく座る。
入れ違いに洗面所に入った将斗は出てくるなり、キッチンに立った。
女子力的にこの絵面はどうかとも思ったが所詮、私だ
―――私の料理の腕前だって知られている。

