私と義弟とバレンタイン【短編】




ーーー10年後。




「ああーーーっ」



「なに、どうした?楓」



慌てて駆け上がってきた男が、やはりノックもせずに私の部屋の扉を開く。
久しぶりに帰ってきた実家で、部屋の掃除をしていて見つけたものに私は言葉を失っていた。



「もうやだ……。
すっかり忘れてた………」



「だからどうしたのって」



私が持っているものを見ても、夫であるその男は首をかしげたままだ。



「これ、あんたに渡そうと思ってたチョコ……」



「え、今年の分はさっき貰ったじゃん。
なに?今年は二つくれんの?」



「ちがーう!
これ、10年前に健太に渡そうとしてたチョコっ」



「は?」



「もーっ、
あの日、健太に告白されて舞い上がって、すっかり渡すの忘れてたんだよーっ」



「え、でも確か………
あの日、お前完全にバレンタイン忘れてなかったっけ?」



「忘れてるふりしてたの!」



「はあ?」




End.




それではみなさん素敵なバレンタインを☆