とんとんとん、、、
足音を忍ばせて、階段を上がってくる音
この歩き方は見なくたってわかる

「けーちゃん!おはよ!!」

部屋の扉が急にあく
嬉しそうな声に、振り向けば、満面の笑みで立っている親友

「おはよ、彩羽(いろは)」

「けーちゃん!今日から新学期だよ!」
「うん」
「一緒のクラスになれたらいいねっ!」

また嬉しそうに、とびきりの笑顔で言う

「そうだね、いこっか」

「いってきまーす」

2人で駅までの道を歩く
彩羽は相変わらず、楽しそうに話をする
これが、朝の日常であたりまえの風景だった

学校に着くと掲示板にさっそく新しいクラスが掲示してあった
いつも投稿が遅いやつも今日ばかりは早い
掲示板の前に人が大量に群がる中、彩羽が人と人の間をすり抜けて、クラスの確認をしにいった

結局、彩羽と俺はクラスが違ったが、すぐ隣ということで、まあそれはそれでよい結果だったのかもしれない
彩羽は凄く残念そうな顔をしていたことに俺は少し嬉しかった

「けーちゃんと違っちゃったね
去年は一緒だったのにー」
「隣なんだし、すぐだよ」
「うん!」

彩羽の教室の前につき、「ばいばい」と一時的なお別れをする
そのころには、彩羽の元気も回復して、誰が同じクラスかなーと楽しそうだった

教室に入ると、とびかかってきたのは健造(けんぞう)だった
「おはよー、愛しの彩羽ちゃんと違うクラスになっちゃったね」
「別に愛しのじゃねーよ」
「ほんとにー?」
「また、けんぞーと同じクラスかよ」
「俺もいるけど?」
クラスに入ってきたのは聡倖(さとゆき)だった
「サトも同じかー」
「おう!よろしくな」
「おう!」
俺のリュックに健造がぶら下がってゆする
「おれはー」
「あー、けんぞーもよろしく」
「おう!」

「なあなあ、彩羽ちゃんのクラスに転校生が来るんだって」
「へー」
「しかも、帰国子女」
「ほう」
「後でいってみよーぜ」
俺の薄い反応に健造は少し不満そうだ
「慶(けい)介(すけ)も彩羽ちゃん、心配だろいこーよ」
「なんで彩羽がでてくんだよ」

健造は俺の反応に少し満足したのか、彩羽ネタを放り込んでくる
最終的に、健造の思うつぼというか、思い通りに進み、健造と隣のクラスを見に行くことになった
行ってみると他の生徒も健造と同じうわさを聞いたのか集まってきている

「どこかなー、帰国子女」
俺は、彩羽を目で軽く探した

彩羽はすぐに見つかった
だが、問題がひとつ生まれた

彩羽は隣の生徒と話していた
その隣の生徒というのが、おそらく噂の帰国子女

「帰国子女いたー!」
健造は大声を出す
「うるさいっ」
すぐに俺は健造を止めるがすでに遅し

「ってか、帰国子女、男じゃん!」
さらに健造がつっこむ

その声が彩羽に聞こえたのか、彩羽が手をふってこちらに来る

「けんぞーくん、おはよー」
「おはよー彩羽ちゃん!」
「けーちゃんたちどうしたの?」
「こいつが彩羽ちゃんに会いた」
健造が変なことを言い出すので全力で頭をはたく

「けんぞーが、帰国子女を一目見たいって」
「あぁー、それでこのヤジ馬か」
彩羽も時々、ズバッというがこの一言は、周りにいる皆様方によく聞こえているということを忘れないでほしい

「それにしても、彩羽ちゃん英語話せるんだね」
「ん?」
健造の質問に彩羽がとまどう
「だって、帰国子女と話してたじゃん?」
あっと思ったのか彩羽が笑う
「うん、まー、帰国子女って言っても彼、以前、日本にいたこともあってちょっとは日本語話せるし、私もそれなりに英語使えるしね」
「彩羽ちゃん、英語得意だもんね」
彩羽は照れたように笑う
「今度、テストのとき助けてよ~」
「うん、いいよ」

そのまま、特に彩羽と話すこともなく教室に戻る
彩羽が、帰国子女の子と話していかなくていいかを聞いてきたが、俺も健造も英語が得意ではなかったので戻ってきた

「彩羽ちゃん、帰国子女の子と仲よさそうだったね」
「彩羽だからな、誰でもすぐ仲良くなるよ」
「もし、彩羽ちゃん取られちゃったらどうするー??」
「それは彩羽が決めることで、俺の決めることじゃないし、
そもそも俺には関係ない」
「ふーん」
「俺と彩羽は親友なんだよ」