迷い風


広い広いフローリングを歩いて
廊下に出た

廊下の開いた障子からは
立派としか表現できないような壮大な庭が広がっていた

歩きながらでも思わず見入ってしまう
そんな庭だった

「ここな、お前の部屋は」

そう案内されたのは緑の綺麗な畳が敷き詰められた
広にめの和室

部屋には木目調の小さな机とくすんだ赤色の座布団
柔らかそうな布団が3つ敷かれていた

「明日からのスケジュールをいう、メモを取れ」

咲はそう言ってメモ帳とペンを渡した

「朝は5時半に起床。6時からミーティング。それが終わり次第庭と入口の掃除。7時になったら戻ってきてお客さんの朝食準備。7時半から9時まで起きているお客さんの部屋の掃除、ふろの掃除、トイレの掃除。9時半になったら入口に集合して海に向かう。海の家は11時オープン21時クローズだ」

必死で書き留める
もう一回とか絶対言ってくれない雰囲気だったし

てか6時から夜の9時まで15時間労働?!
労働基準法はどこに行った

「さっきも言ったけどほかにも学生のバイトがいる。といっても俺の高校の同級生って感じだけど。女子がお前入れて3人。男子は俺ともう1人」

「初めまして~っ」

それと同時に部屋に入ってきた

「紹介してくれなかったらどうしようかと思ったよ~。私、本城 まひる。みんなにはひーって呼ばれてるよん。よろしくね~」

最初に紹介してくれたのは黒い巻き髪が揺れるかわいらしい女の子
長いまつ毛とまん丸の目
甘い香水の匂いがする

「内田 そらです。よろしくお願いします」

「そらちゃんか。そらって呼んで平気?」

そういって笑ったのは茶色い髪の男の子だった
無邪気そうに笑った笑顔は男の子だとは思えないほどにかわいい

「あ、全然なんでも大丈夫です」

「敬語じゃなくて平気だよ!俺らみんなタメだし。そらが来るのみんなすっごい楽しみにしてたからさ。俺は、本城 日向。ひなたって呼んでね」

そうやって言ってまた微笑んだ
本当に名前のごとく太陽みたいだ

「ちなみにひーとひな兄は双子なの」

黒髪の女の子はそういって笑った

「えっ」

「本城まひると本城日向」

言われるまで気付かなかったけど
確かに顔立ちが似ている
どっちも美形だ

「そうそう。あとね、もう一人女の子がいるんだけど、どっか行っちゃて」

「ほんと楓は自由人だよね~。たぶんもう少ししたら帰ってくると思うんだけど」



もう一人の女の子の名前