誰かのスマートフォンが鳴り響く

目をうっすら開けると
引き戸から光が漏れていた

見慣れない景色に驚いて起き上がる

隣にはひーが起きてるのか起きてないのかわからないくらいで口をもぐもぐと動かしていた

そうだ、わたしは旅館にいるんだった

昨日の夜…
日向が寝て、ひーが楓にベタベタし始めて、ひーが寝て…

その後どうしたんだっけ

「そらも寝ちゃったのよ」

今日も美人な楓が髪を縛りながら言った

「そら凄かったわよ〜大声で叫んで」

「えっ?!ほんと??」

「うっそー、知らぬ間にパタンと倒れて寝てたわよ」

楓はくすっと笑った

「ひどーい」

「よく言うよ〜、あんたら3人運んだの私と咲なんだからね、感謝してよね」

「あ、すみません」

「ははは、まーよくありなことよ」

楓は結んだ髪の毛を根元から二つに分けて
ぎゅっと引っ張った

「さて、このねぼすけを起こすか」

楓は呆れた顔をしながら
でも楽しそうに笑った

「ひー、起きて」

「あー、そんなんじゃこいつは起きないから」

そう言って楓はひーの布団を思いっきり引っ張って
ひーを布団から落とした

「起きろ」

「…、あ、おはようかえりん」

「だからその呼び名止めろって言ってんだろ」

「かーえりんっ」

ひーは楓に抱きついて起き上がった