私にはそれこそ幼稚園から高校まで同級生だった男の子がいた
なんでも話せて
イベントごとではいつも隣にいて
一番心が許せる相手だった
だけど、わたしがこの島に行くって話をしたあの時
「2か月も帰ってこないの?」
「もう少し向こうにいるかもしれないけどとりあえずは2か月って感じかな」
二人で公園のブランコに座って
私はゆらゆらと動かしていた
「どうして、そんなことになったの?」
どうしてってそこまで理由があったわけじゃなかった
ただ逃げたくて、息が苦しくて
なんて恥ずかしくて言えなかった
「なんかあったの?」
「なんもないよ、ただの旅行」
「なんもなくないでしょ、そらってね、無理してるとき爪をはじくくせがあるんだよ」
私は思わず自分の手を見た
右手の爪に左手がある
「えっ」
「結局何も話してくれないよね、そらはいつも」
そうやってその人は笑った
今まで見た笑顔の中で一番悲しそうな笑顔だった
「どうしたの」
その人はブランコから降りて
私の目の前に立った
「好きだよ、ずっと前から」
最初はその意味が全然分からなくて
3秒あとくらいに徐々に頭が追い付いてくる
「ずっと、そらの一番になりたいって思ってた」
あまりの衝撃に言葉が出てこなかった
「うそでしょ」
「こんなテンションで冗談言うわけねーだろ」
その人の目が見れなかった
とにかくこの場から逃げたいという気持ちが私を支配して
「ご、ごめん」
その言葉だけ残して私はその場から逃げ出した
それから今日まで一度も会ったことも
連絡すらしたことない
冷静に考えれば最低だと思う
だけど
今まで過ごしてきたほとんどの時間を友達として過ごしてきた人を
今更そういう風になんて見れない
かといってその人を失いたくなくて
会って、断ったりなんかしたらもう会えない気がして
結局何にもできないでいる
