「そうなんだ~、そら東京の方から来たんだ~」
二人で浴槽に並んでいる
さっきまで知らなかった人とお風呂に入るなんてなんて思ったけど
ひーの方はなにも気にしていないようだった
「正確に言えば住んでいるとこは神奈川なんだけどね」
「どっちも同じようなもんじゃん。いいな~」
「どうして?」
「どうしてってやっぱり都会はあこがれるものよ。ひーはこの島のこととっても好きだけど、やっぱり洋服とか自由に買いたいなって思うし」
「そう」
「なんで、こっち来たの?」
体がうってなったのを感じた
「旅行を兼ねてかな~。この島すごい海きれいって有名だったし」
本当は逃げてきましたなんて言えない
「そうだね。ここ数年めっちゃ観光客くるようになったんだよ。もうびっくりしちゃうくらい」
「やっぱりそうなんだ」
「うん。おかげで大変よ。中学生の時から咲の家のお手伝いしてるんだけど、毎年毎年ハードになっていくの。それに方言直されたりしてね~」
「たしかに、みんな方言ない」
「そうなんだよ、やっぱり観光客が多くなると標準語で話したほうがね」
「そうなんだ」
「まあひーはいいんだけどさ。方言って田舎くさくてあまり好きじゃないし」
「私方言憧れるけどな~」
「馬鹿にしてるのか~」
そういってひーは思いっきりお湯をかけてきた
「うわっ」
「失礼な都会ものに制裁を」
「ほんとだって~、やりかえし」
そういってお湯をかけた
誰かと大きなお風呂に入ることも
こうやってお湯をかけあうのも久しぶりで
なんだかとても懐かしく思った
「でもよかった、そらもっと絡みにくい感じかと思った」
「えっ」
「なんかさ、東京のひとって冷たいイメージでさ」
わかるわかるって思わず同調しそうだった
「だからこれからよろしくね、そら」
ひーはそういって手を出した
「よろしく」
私がその手を握ろうとした瞬間
お湯がぱっしゃとかかった
「隙ありですよ~、そらさん」
そういってひーはいたずらっぽく笑った
「ちょっと~」
それを見て私も笑った
