バスの心地好い揺れに身を任せて、起きたのは結局目的地に着いてからだった。




「オルゴール造るぞ~♪」





長野先生は長野に来ているから上機嫌なんだろう、と気が付いたのはバスから降りて先生の鼻歌を聞いたときでした。


俺様に音符とか似合わなさすぎる。





オルゴールって造れるんだ……


まぁ、出来あがっているパーツをくっつけるだけだけど初めて見る道具とかがあってテンション上がるかも。





「レミちゃん!俺もレミちゃんと同じ『月の光』にしたよ!」


「私『愛の夢』だけどね。」


「えっ?」




絶望したような顔を向けるな


沸き上がらせたくない罪悪感が取り立て屋よろしくノックしてくるから



ちなみにオルゴールの曲は合宿の2週間位前に学校で希望を取っていた。


100曲位ある中から好きな曲を選ぶんだけど、松田君は何がなんでも私と同じ曲にしたかったらしい。


なんでも一緒にしたがるところ、小学生女子みたいだった。


いつまでも「何の曲にするの?どんな曲が好き?」と聞いてくるので、

「クラシック好きだよ。ピアノやってたし、『月の光』とか?」って返した気がする。


実際に好きな曲だし。





「ごめん。嘘ついた気はなかったんだ……」


「……うん。」





こんなにも落ち込まれると心苦しいんだけど……


取り立て屋に押し入られて謝ってしまった、屈辱。



『月の光』は後半が好きなんだけどオルゴールって最初の方が流れるでしょ?


だから私は『愛の夢』にしたんだ。