苦いチョコレート。


電車を待つ駅のホーム。
ラッシュが過ぎて少し落ち着いている。
ひとりで考えるとまた涙が出そうになる。堪えるためにうずくまっていた。

「大丈夫ですか?」

低すぎない、優しい声。その声に少しだけ惹かれた。

「大丈夫です、ありがとうございます。」

そう言い、目の前に立っている人を見た。

心の中で何かが弾けたような、そんな不思議な感覚がした。

どこかで、会った。私はこの人を知っている。ちがうちがう、そう否定しながらも、訪ねてしまった。

「お名前は?」

「藤堂 叶結(とうどう きら)ですけど、それが何か?」

「いや、ごめんなさい。知り合いに似ていた気がして」

「期待はずれでごめんなさい。」

「こちらこそ、すみません。」

叶結。名前は一緒。だけど、名字が違う。別人なのかな、きっと、たぶん。