「で、俺に言えないことって何?」
話を戻した俺に、アユミは落ち着いて答えた。
「そうだね…。海斗には、言えないかな。」
「ふーん。どうせ空には言ってんだろ?」
俺とアユミは立ち上がって、夜の砂浜を歩いた。
アユミは、ずっと遠くを眺めていた。
そして、アユミが口を開いた。
「空にね、好きだって言われたの。でもね、私……」
アユミの言葉を最後まで聞かないうちに、俺はアユミの唇を奪った。
波の音も、虫の声も、俺には聞こえなかった。
この世に俺とアユミだけ。
そんな気さえした。
「でも…何?」
彼女は、ふんわりと微笑んだ。
初めて出会った、あの日のように。
「でもね、私…。海斗が好き」
俺らは、満点の星空の下で結ばれた。
そして、俺らのすべてを見ていた海。
海は、いつでも俺の味方だと思っていた。
あの日までは。

