「今の彼氏のこと?」
「ううん。空のこと。空、好きになっちゃったから」
「そうなの!? じゃあ、前の彼氏とは…?」
「昨日、自分から振って別れちゃった!」
そう言って、雫は私に手の平を裏返して見せた。
ハイビスカスのリングは、もうなかった。
でも、雫の笑顔は晴れ晴れとしていた。
「そうだったんだ。応援するよ、私!初めて雫と空見たとき、お似合いだなぁって思ったもん!付き合ってんのかと思った!」
私がそう言うと、雫は大笑いした。
「あはは!ほんとに!?嬉しい! ここみもさ、恋愛不信になる気持ちも分かるけど、海斗のこと見てやってね。雫は、ここみに海斗を好きになって欲しいな!海斗は絶対裏切ったりしないと思うよ!」
「うん……」
引き寄せられたときの海斗の腕の温もりが、まだ体に残っている。
まだ好きにはなれない。
けれど、好きになってみたいと、ちょっぴり思った。

