「おい。」
背後から声がした。
月明かりで、砂浜に自分の影と重なって、別の影が伸びていた。
振り返ると、そこには…海斗がいた。
「何かあった?」
海斗は、私の顔を覗きこむ。
私は泣き顔を見られないように、下を向いた。
「ここみ?」
初めて名前を呼ばれたのが、この日だった。
少しドキッとしてしまったのは、気のせいだろうか。
「彼氏に振られた。」
「なんで?」
なんでって…。
普通そこ聞かないでしょ。
「分かんない!」
そんなの私が聞きたい。
再び、目に熱いものがこみあげてきた。
私はムキになって、泣きながら答えた。

