何だか悔しくて、私はそいつの持っているホースを奪って、水をかけてやった。
「なっ…にすんだよ!!」
「へーんだ!さっきのお返し!」
その後、そいつは何も言ってこなかった。
犬みたいに頭を振って、濡れた髪をかきあげた。
言い返せばいいのに。
可愛くないヤツ。
すると、そいつは海の家の近くまで戻り、飲み物を売り始めた。
ビーチパラソルの下で、氷水にたくさんペットボトルが浮いている、飲み物売り場。
どうやら、水をまいていたんじゃなくて、仕事をサボってホースで遊んでいたらしい。
ガキだなぁ。
「お前も手伝えよ!」
「はいはい。」
ムキになるそいつに、私は気だるく返事を返した。
それからは、特にそいつと話すこともなく、黙々と働いた。
とにかく忙しくて、暑かった。
でも、忙しさも暑さもどうでもよくなるくらい、充実していた。

