それぞれが、様々な思いを抱えたまま、時が流れた。


夏の終わりの海は、とてもすいていた。

忙しさのあまり、目が回りそうになっていた頃が、懐かしい。


でも、海の輝きは変わらなかった。

海は私たちの夏の思い出を飲み込み、さらっていく。


夏の終わりは、なぜか感傷的になる。

夏真っ盛りの頃は、『暑いからやだ』なんて言っていたけれど、夏が終わりに近づくと、何だかとっても寂しくなるのだ。


今年は、特にそうだ。

きっと、しおかぜのみんなとの別れが待っているから。


「おーい!海斗、空、雫、ここみ!お前らも、あと一緒にいられる時間少ないんだから、上で一緒に働いて来い!今年の下の仕事は、これで終わりだ。」


俊兄が、首にタオルを巻きながら、私たちに向かって叫んだ。


今年の下の仕事、これで終わりなんだ…。

胸に宿る寂しさを、次に待つ仕事が掻き消してくれた。


海斗、空、雫、私の4人で、上で働いた。

4人の笑顔が耐えることはなく、すごくすごく楽しかった。


私は、雫が無理して笑っていることも、空が苦しんでいることも知らなかった。

人の幸せを願っているつもりで、自分の幸せしか見えていなかったのかもしれない。


それぞれの苦しみを知ったとき、私は今自分がどんなに幸せなのかを知った。