店の前まで来ると、私は店全体を外からまじまじと見た。
白を下地にした、古ぼけた木の看板に、青いペンキで“しおかぜ”と書いてあった。
もう、大分はげかけている。
どうやら、この海の家は“しおかぜ”と言う名前らしい。
潮が満ちてきたときに、海水が入らないようにするためだろう。
木でつくられた簡単な階段が設置され、少し高いところにあるその店は、たくさんのお客さんでにぎわっていた。
嬉しそうにかき氷を手に持った男の子が、“しおかぜ”から出てくる。
おいしそうな焼きそばの匂いと、注文をする人の大きな声。
その下で、砂浜に寝転んで焼いている人もいる。
何だか、すっごく楽しそう!
単純な私。
さっきまでのブルーな気分は吹き飛び、わくわくした気持ちで、私は砂浜を駆け出した。

