もくもくと育つ入道雲が見える、夏の午後。

それは、夏休みに入る5日前のことだった。



「ねぇ! 健一と美由が付き合ってるって、ホント!? 嘘…だよね?」



私は学校に着くなり、親友の美由に問い詰めた。

私の彼氏・健一と、美由が付き合っているという噂を耳にしたからだ。



「え? ホントだよ。あんたの彼氏、好きになっちゃったから、奪っちゃった。ごめんね?」



セミが鳴き始めていた。


自転車で坂道を必死になって走ってきたせいで、汗だくだ。

こんなに暑いのに、部屋の中はエアコンがあまり効いていない。



私は彼女の言っていることが理解出来ず、その場に立ち尽くした。

目の前で、余裕の笑みを浮かべる彼女の顔をただぼーっと眺めていた。

だが、ふつふつと、この猛暑にも負けないくらいの怒りがこみあげてきた。

私は歯を食いしばり、手に力を込めた。




「ざけんなああああーーーー!!!」




そして、そいつにパンチをお見舞いしてやった。

あとから聞いた話によると、全治1週間のけケガを負わせてしまったらしい。