「そろそろどっかで降りる?この中なら撒けるんじゃない?」
甘い・・・昔から心配性の癖に若干甘いんだ。
「だけどな、人数集められて探されたらアウトだ。ここは込み合ってる。けど、家の外に出てる人は凄く少ないんだよ」
そう、この場所が小学生の間でゴーストタウンやらお化け横丁やら言われているのは、この込み合った路地もそうだが住んでいる人を殆ど見ない事からもきている。
「そんな所を男二人でウロウロしてみろ、目立って仕方ない」
「ん・・・・そうか・・」
ゆうも少し考えているようではあるが、こいつは致命的な方向音痴だ。良い策がまとまるとも思えない。
「神社だ。今そこを目指してる」
恐らくぼくが今言わなければ、ゆうから聞いていただろう。心配性なヤツめ。
「神社・・・考えたけどオレじゃ行けないからな・・場所わかる?」
後ろが振り返れないけれど、自信の程を見せる為にも大きく頷く。
「大丈夫。誰かさんが方向音痴なもんだから、鍛えられたしな」
「・・・ふん」
そろそろ弄るのも止めておかないと。今ゆうから攻撃されると防御手段も反撃手段も無い。
「ん、多分あれが神社に一番近い出口だ」
「出口っていうよりもう裂け目だな」
あまり上がらない視線をぎりぎりまで上げても、両隣にある建物の屋根は見えない。
光の裂け目がどんどん近くなる。その時ぼくは、もう大丈夫だと能天気に笑っていたのかもしれない。