アキラと二人並んでマロヤスの正面入り口に立つ。自動ドアがウィーン。
「やっぱり野菜売り場あたりでうわぁっ!」
ぐっと今にも駆け出しそうだったアキラの細い腕を掴んで駆け出す。
店内ではなく、すぐ横に伸びる横道に。
マロヤスの正面入り口には田舎独特であるちょっと乱暴に横付けされた車がある。
全部は無理かもしれないけれど、きっと一瞬の出来事だからごまかせたかもしれない。
店内で撒くと言ったのはフェイク。ついでにそれを十全にする為に自動ドアを開けたのもフェイク。追っ手である奴等も走っているのだから、開いた自動ドアを見て完全に横道に行ったとは確信できないだろう。
バーガーショップと同じようにマロヤスの敷地内にある薬屋とマロヤスの間の横道を海に向かって走る。ちぇっ・・・案外掃除されていて足止めになりそうな物が少ない。
「アキラ、先走って。真っ直ぐ」
マロヤスの店舗分走ると、そこはもう海に面した小さな野原だ。
「わ・・わかった!あれ!そこ出たらどっちに曲がる!?」
超問題。マロヤスの裏に隠れるかそれとも薬屋の裏に隠れるか。
考える時間が欲しい!もっとちゃんと考える時間が・・!
「お前店の中行け!お前はそっち!おれはここから裏に行く!」
ほとんど真後ろから声が聞こえる。本当に時間が無い。
「アキラ、左だ」
「らじゃー!」
すぐに駆け抜けて左に曲がるアキラ。ぼくはあえて右に。
「ちょ・・なんでそっち!?」
曲がってすぐの所でアキラは屈んで待っていた。
「リスクの分散だって」
追っ手は3人。一人は罠に掛かって店内に、一人は今来た道を、もう一人。
このもう一人が問題だ。こいつはきっと別の道から裏に回って来ようとしている。
マロヤス側か、薬屋側か。マロヤス側から表に行くと、そのまま大通りの道に出る。
薬屋側から表に出ると、横に流れている川沿いに進める。
落ち着いて相手の気持ちになれ・・・。
どっちが困る?大通りに出られるのと、川沿いに進まれるのと。
もちろん、川沿いが困る。車で轢こうにも、そのまま川に落ちる可能性があるからだ。
しかしそこまで考えているだろうか?
あの頭の悪そうな連中が、ぼくと同じような事を考えられると?
・・・いやぼくも頭悪いですけれどね?