すっっっかり忘れてた。こちらには素性の怪しい旅の人が一緒で、それに・・
「線の細い男で黒髪手荷物無し・・・アキラ、ちょっと立ってみてくれる?」
「えぇ・・・なんだよぅ」
のろのろと立ち上がる。ハンバーガーを半分残して既にお腹いっぱいの体。ポテト約2つも食べるからだ。
・・・・ちょっと待て。
「ええと・・・」
比較しやすいようにぼくも立ってみる。ちなみにぼくの身長は160丁度。店員の女の子も同じくらい。
アキラの目の前に正対してみると、ぼくの目の前にはアキラの口やら鼻の辺りが。
「アキラ・・・・身長いくつだ・・?」
「計ってないからわかんね。2年くらい前で165くらいだったかなー。成長期だからわかんないよ?今はもっと伸びてるだろうしね」
ほれ、と足を見せる。タイトフィットのパンツの裾は、ぼろぼろだがなぜか今は踝が見えかかっていた。
「旅立ちの日には引きずってたんだけどねー」
もっと伸びたらデルモになろうデルモに、とかんらかんら。
「175くらいに見えなくもない・・・・」
「私は違うって言ったんです・・・5分前には来店されてたし・・・それにこうさんがそんな・・・」
まだ歯切れが悪い。おかしい。悪いニュースはもう済んだはずだ。
「でも・・・店長が一応って・・・」
「・・・・ありがと」
その一言で全て察して、アキラの手首を掴んで駆け出す。
「ちょ、ちょっと!?」
事態の呑めていないアキラはまだ駆け出さない。
一秒だって惜しいのに!
「アキラ、そっくりさんが”南”から入ってきた。勘違いされるかもしれないから家に戻るぞ」
「えぇ・・・『宵の口』には?」
「殺されるぞ」
掴んだアキラの手首が一瞬冷たくなったように感じた。
「・・・・わかった」
二人して駆け出し、店の自動ドアに向かう。
ギャリギャリギャリ!!
黒色の大型車両が店の前に横付けする瞬間、僕達は表に飛び出した。
「ごめんなさいっ!」
後ろから声がする。店員の女の子。そんな、泣きそうな声で謝らなくたっていいのに。
どこか他人事のように思いながら、アキラを連れて大きく車のフロントをかわして広い駐車場に飛び出した。