「え・・・それむちゃくちゃじゃん」
「うん、むちゃくちゃ。でも、もちろんおおっぴらに”殺せ”とか言わない。あくまで”捕らえようとしたら抵抗したので”って事になる」
町内新聞にも報告として載ったりします。
「でもさでもさ、何を基準として”南から来た人”ってなるわけ!?間違いだって・・」
「あった。そりゃもちろんあったよ。勘違いのマーダーが。んで、それをもみ消すなんて約束は日本政府はしてないからね。マスコミによって報道されまくり」
「・・・・そしてこの町に来る人は激減し、余所者の判別が容易になった?」
「ほんと、理解が早くて助かるよ」
ぼくもう喉カラカラですもん。
「いやぁ・・・その土地その土地いろんな事があるもんだねぇ・・・」
「まぁ地元の人間は慣れっこだし、別に不自由は感じないけどね」
「じゃあとりあえず町を案内してくれる?」
「理解は早いけど馬鹿だな!」
「えええ・・・わかってますって。あんたが命の恩人だったかもしれないって事でしょ?」
「う・・・まぁ恩に着せるつもりは無い。ほんとに。君だってほっといたら危ない人を黙ってほっとかないだろ?」
「うーん・・・人によるかなぁ・・」
「おぅい」
「うそうそ。いい人だね」
「今にも騙されてたりしてな」
「そんなー別に旦那のバイクを拝借しようなんざ思ってませんって」
「・・・・・」
「わははははっ!ほんとあんたいい人な!」
「・・・・だいじょぶなんだろうか・・・」
一抹の不安は、それでもあまりにも無害な笑顔でかき消された。