永冨 夕の行方は、あの日あの夜に少女を連れたまま不明となっている。
最後に会った人間はぼく。
対4国管理室4室の推測では、闇に紛れて町の外に逃亡したとされる。
人が4人(追っ手3人に対象者1人)も死んでいるというのに大した話にもならず、警察も”南から来た人間に町の人間が3人殺され、1名が逃亡中”とだけ。
ゆうの存在は、完全にもみ消された。
ぼくはゆうを見失ってから数時間で幼馴染に死亡判定が下った事を聞いた。
もうぼくの唯一の幼馴染は、社会的に死亡した事に、なっていたのだ。
対4国管理室には真睡の更に西、覚醒町(通称・覚醒)から逃亡したのではないかと話された。
信じれる訳が無い。
人質にもならない、足手まといな少女を連れて、仲間を殺されて躍起になっていた真睡を武器も持たずに通り抜ける?あの虚弱体質が?
信じれないを通り越して馬鹿馬鹿しい。
ではゆうはどこに消えたのか。
ゆうがいなくなってからは、真睡の連中を疑った。
町の仲間を殺した人間を捕まえ、逃げたように見せかけて自分たちの手で殺したのではないかと。
ぼくが対4国管理室にバイトに入るまで、ずぅっとそう思っていた。
でも、ある日偶然に見てしまった。
仕事の内容を把握する為に見ていた資料の中に紛れていたあの日の勤務表。
そこの”橋上入国管理”にある名前。
あの日そこに1人で仕事をしていた人物がいた。仕事の内容は主に橋を渡って”南”から来る人や車を監視・報告する勤務。それはつまり、橋を渡って行く人や車を見ている仕事でもある。
あの日そこで仕事をしていた人物は・・・・ゆうの父親だった。