「この状況で、今のキスはその先に進んでもいいってことだよな」

男のニヤッと笑う悪魔の笑みに後悔しか浮かばなかった。

離れようと逃げる私の腕を掴み、引き戻されてしまう。

「逃げんなよ。傷つくんだけど…」

シュンと悲しい表情を見せる男の頬に手を伸ばし、

「…ごめんなさい」

謝ったのもつかの間、悪魔の笑みを浮かべた男にやられたと顔をしかめていた。

「傷ついてないですよね⁈」

「…凛が手に入るなら悲しい演技もするかもな」

もう、なんなんだ。
そんな甘い声でそんなことを言われたら怒る気にもなれない。

「そんな演技いらないです。もう、私の心は仁だけしか見ていません」

突然の私の反撃に驚いたのか、悪魔な彼の笑みが崩れていく。

耳まで赤く染め、ボッと湯だったタコのように顔中真っ赤か。

それを見て気を良くした私は調子付く。

「そんなに真っ赤かになって、かわいいですね。嬉しいですか?」

そのセリフが良くなかったようで、彼の悪魔スイッチを押してしまったらしい。

「あぁ、嬉しいね。嬉しすぎてこの気持ちを凛にも知ってもらわないとな」

突然、ふわっと浮き上がる体に戸惑う私はなにが起こっているのか思考が追いつかないでいた。