悪魔な彼が愛を囁くとき


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夜の営業も終わり、気が緩んで頭の片隅にあった昼間の出来事が思い出されると

『営業後、覚悟しておけよ』

男の言葉が頭の中をぐるぐるとループして背筋に悪寒が走しった。

私、何をされるの?
ムードが台無しってなに?
甘い雰囲気をぶち壊したから、仕返しされるってこと?

イヤ…でも、あれは私に拒否する権利もあったはずだけど…あの人に通用するの?

また、あの蕩けるキスをされるの?
それ以上のことを求められるの?

イヤ…まさかね⁈
でも、求められたらどうするの?
拒めるの?

今日の下着って何着てたっけ?
ちょっと待ってよ。
私のバカ…思考が飛び過ぎ。

好きだとも認めてないのに、ないでしょう⁈

ブルブルと頭を振り辺りを見渡せば、片付けが終わったバイトちゃん達に店長は『お疲れさん』と声をかけ帰している。

うそ…

2人きりにしないで…
私も、帰りたい…

慌てて仕事を片付ける。

店長を見れば、まだレジ閉めの真っ最中。

よし…今のうちに

「店長、お先に失礼します」

休憩室に向かう出口に立ち、聞こえるか聞こえない声で話しかけると、こちらを見た男は片方の口角を上げ、鼻先で笑い追い払うように手を振っていた。