悪魔な彼が愛を囁くとき


私に気づいたような気がしたのに、背を向けられた⁈

モヤっとしながらも開店準備を進めていく。

ホール内全ての準備が整い、後は店長に言われた外窓拭きだ。

その頃になれば、他のスタッフも出勤しだし騒がしくなってくる。

「おはようございます」

元気よく挨拶して入ってきたのは、綾乃さん。

「おはようございます、綾乃さん。私、残りの時間で外窓拭きしてきます」

「手伝おうか?」

「……いえ、店長の命令なので1人でしてきます」

「ありゃ…昨日、あの後ご機嫌悪くなったの?」

「……いえ、そう言うわけじゃないんですけど、今朝、少しいろいろあって…あっ、時間ないんので、後でまた」

「はーい。いってらっしゃい」

慌てて外に出て、大きなガラス窓にホースを伸ばして水をかけていき、ガラスワイパーハンドを伸ばし上から水を拭き取ることを繰り返した。

額ににじみ出る汗を手の甲で拭き、ホースを片付けてお店の中へ

既に、朝礼が始まっていて小走りで佐和さんと綾乃さんの後ろに立つ。

「凛、窓拭き終わらせてきたのか?」

「はい」

店長の低い声に緊張が走る。

「…お疲れさん。身だしなみ整えておけよ」