彼に必要とされると満たされる自分がいる一方で、

彼の好みになったところで、
満たしてと言われ、髪を切ったところで

写真に全てを捧げている彼が見つめているものは
いつも遠くにある何かで

もしくは

彼自身がとても遠くにいる。

そう思う度に、私は果てし無く孤独を感じる。


すぐ横に彼がいて
肌は触れていても
この横顔がこちらに向くことがないということをなんとなく感じていた。

「どうしたの?」

なんて答えていいかわからず、なにも言えない。

「タクシー呼ぼうか」



まだ夜が明けないうちにマンションを出た。
今日もエレベーターの中で魚は
ひらひらと泳いでいる。



"朝の光って残酷だからね。
いい思い出は、
夜のうちに終わらせる方がいい。"


いつか読んだ本の一文が、頭を過る。