「千夏ぅ~!!」 ふいに呼ばれて振り返れば、家の玄関は目の前で、母親が腰に手をあてて立っていた。 「あれ、お母さん?」 間の抜けた返事をする私に気が抜けたのか、がっくりと肩を落とす母ーー。 「心配させんじゃないの。 まぁったく、待てど暮らせど帰ってきやしないから…」 「――え?」 「『え?』じゃないわよ。もう11時になるのよ」 驚いて携帯を見ると、画面のデジタルは10:53を表してした。