夕暮れ時で、空もそこに浮かぶ雲も、茜色に染まっていた。そして、何十羽もの鳥が群れを成して円を描きながら飛んでいた。



規則的なその動きに、釘付けになっていると、

「不思議ね」

女の声がして振り返った。



歳の頃は、15、6だろう。小首をかしげこちらを見る様は、まるで幼子のそれだった。


結い上げた黒髪が、夕陽を浴びて茜色に染まっている。

「…………」


なんて返事をすればいいのかも分からず、黙り込む。何も話さなければ、自分の事など気にせずに離れてくれるのではないかと期待していた。