…っ、お、っと。

誰かとぶつかってしまう。

「ごめん!大丈夫!?」


…かわいい。


そんなことを思ってしまった。

え、まじでかわいい。
なんていうか、細くて長いさらさらの髪は儚くて、
ぱっちりと大きい目は全てを見透かしたかのようで。

小さくて桜色のくちびるからはどんな声が紡がれるのだろう?

と、髪の毛の隙間に桜の花びらをみつける。

「ついてる」

手を伸ばす。
刹那、彼女の髪に指がふれる。


「なのー!菜音ー!」
彼女の友だちとおぼしき子が呼んでいる。
ぺこり、と頭を下げて彼女は走っていった。



ばくばくばく。

…ちょっと、心臓さんうるさいです。

ばくばくばく。
「うるさいって…!」

ただ、守りたいと思ったんだ。

誰よりも強そうで儚い彼女を。