―精霊の祖の恋物語― 前編





「さっきの話の続きなんだけれど…


 私が幼い頃、

 リリーさんに会った事があるの。

 覚えてないかもしれないけど…

 私にとっては凄く衝撃的だったから

 覚えているの。」



リリーは目を瞑った。

しばらく経つと…



パッと目を開ける。

その頃には風の精霊の姿だった。


「…思い出した。」


「リリー?今、何をやったんだ?」


「記憶を辿っておっただけじゃよ?」



「記憶?」


俺が聞き返すと、説明してくれた。


「ふむ。

 自分の中の記憶を覗いておったんじゃ。

 風を使っての。

 
 他の者の記憶も辿れるんじゃよ?

 まあ、使わんがの。どうじゃっ?


 リヒトの記憶を…

 ちと覗いて見てもいいかの。」