―精霊の祖の恋物語― 前編





リリーは「キャッ。」と声を上げるが、

震えた手で俺にしがみ付く。


「リリーが自分から行くと

 決めたなら行けばいい。

 
 俺が傍にいるからな。」



リリーは、小さい声でこう言った。


「はい。…私は…リヒト君を…

 守るために…行きます。」


「それは心強いけどな、

 俺にも守らせてくれ…。


 リリーを…。」


「えっ?」


「確かに、俺はリリーと比べると

 はるかに弱いけど…


 リリーを守りたいって思いは強いから、

 だから、俺にもリリーを守らせてくれ。


 男なんだし…

 リリーは…か弱い女の子だろ?」


「クスッ……分かりました。

 守ってくださいね。リヒト君。」