ママは昔からあまり身体の強くない人だった。

パパは仕事はできるけれど、根っからのお人好し。何かを頼まれたら断れないタイプの人。

そこに私と、弟君達が生まれて。

特に、弟君達は育ち盛り。放っておいたら私のカップラーメンも食べられちゃうぐらいに。だから、私のだって分かるようにいつもカップにフタバのマーク描いてるんだけどね。

そんなわけで、我が家は常にお金に余裕がない。なんとか高校は特待生とって入ったけど、それでもお小遣いなんてないに等しくて。


つまりは、そんな高級な制服のクリーニング代なんて払えないわけで。



「あ?そんなこと関係ねーよ。」


事情を説明するも、閻魔大王様の反応はこれだ。
確かに今まで失礼な態度とってた私も悪いんだけど!


「そ、そこをなんとか…」

「無理なもんは無理!テメーの事情なんて知ったこっちゃねーよ。」

うぅ…血も涙もないってまさにこのことなんだね…


でも、そこで崩れ落ちる私の前に思わぬ助け船が現れた。



「まーまーそうイジワル言ってやんなよ!!」

「き、北瀬君…!」

相変わらずヘラヘラしてるけど、今回ばかりは北瀬君が神様のように輝いて見える。


けれども。


続く言葉に、私は完全にその場に固まってしまった。



「クリーニング代の分、萌衣ちゃんがセイん家でバイトすればいいだけじゃん!」




……はい?


今、なんと…?




「は?家でバイトってどういうこと?」

私の気持ちを代弁するかのように、それまで傍観を決め込んでいた明希が問いかける。

「ん?あぁ、セイん家ってスゲーお屋敷だからさ。人手はいくらあっても足んねーぐらいなんだよね!だからそこで雑用でもさせてもらえばどうかなって…あれ、キミ可愛いね?萌衣ちゃんのトモダチ?名前は?」

「…だ、そうだけど、どうすんのよ萌衣。」

北瀬君を完全に無視して、明希が尋ねてくる。

「ど、どうするって言われても…」

チラリ。閻魔…じゃ、なかった。
日野君の様子を窺ってみる。

すると一瞬、目があったけれど、すぐに逸らされて盛大な舌打ち。

ほら…本人が嫌がってるなら私にはどうにも…



「おい。」


「え?」



でも。


日野君の次にとった行動は、予想外のものだった。




「ついてこいメン女。うちに案内してやる。」