微睡《まどろ》みながら、思い出す…貴方の微笑み…
それが、この私に残った……たった1つのかけが得ない 宝物。

 宵闇《よいやみ》の戸張が降りる頃…私は貴方が愛してくれた 私に戻る…。

 この身を‥蝕むのは、嫉妬という…身を裂く様な呪い…。

 この身が、若返りても 何も良い事など…無いのに…。

愛してくれた貴方も、可愛い子も…この世には…いない。
(娘が一人同じ呪いにかかってたねぇ)…っとぼんやり、そんな事を頭の片隅に思った。


 日が昇る頃、私のお勤めも 終わり…それと同時に、 この身もそれ相応に戻る。
 

 ある日、姫巫女達が…訪れて来た。
 「母上~生きてる~焼菓子持って来たよ~」仮にも五代目の姫だった者が!っと説教しようと したところ‥
「待った!お小言は今度ね~」っと言いつつ「お客さんだよ」と、振り向いた。

 すると、戸口から堂々と一人の少年が入って来た。
それは今の女王の息子…。

 「お久し振りです。おばば様」笑顔が眩しい、可愛い子孫…頬が緩むのを そのままにして問う。
 「おぉ。良く来たのぉ。どうした?妹君達は来ぬのか?」

 初代の名を冠するシオン王子は一瞬 顔を曇らせた後 おどけて「おばば様無理ですよ。僕にも証が出てしまったんですから」 

 私は雷が身体を貫いていくのを感じた……私が初めに、この身に受けた……あの当時のとぐろを巻いた様な黒い感情。
そして、代々の姫達が私の為に負った心の傷。
 
それが、今度は 王子の身にも……愕然とシオン王子を、見つめていると 王子は私を心配させまいと微笑む。  
 「それでな、母上…」凛々しい顔を向けて、我が娘が言う……。

 本当に憎らしい位に…似て……愛しい我が王。(ぽっ)

そんな事を、ちらっと思いつ 頬に熱が上がってくのを、手で扇ぎつつ‥可愛いシオン王子に向き合い……。


 「大丈夫じゃ…。任せよ。」そう言いつつシオン王子の頭を安心させるように撫でた。