教室内は騒がしくて、チョコレートの甘い匂いがする。
自分の席について、二列向こうの席にいる西山くんを見た。
ちょっと丸まった背中。
まっくろなマフラー。
大きな藍色のリュックサック。
寝癖のついた黒髪。
西山くん。西山昭(アキ)くん。
私、神木柚の、好きなひと。
*
去年の、秋のはなし。
調理実習で、カップケーキ作って。
教室で、他の班の子達と交換しあったりして。
私もクラスメイトの女子に誘われて、その輪に混ぜてもらえた。
私はお菓子作りが趣味で、私と同じ班になった子に『作るの上手い』なんて褒められたりして、ちょっと浮かれてた。
『神木さんと一緒の班、いいなぁー!なんかここだけクオリティ違うじゃん!』
『ねね神木さん、交換しない?神木さんの班のやつ、すっごい美味しいって評判なんだよ~』
なんて言われて、嬉しくて。
思わず、えへへと笑った。



