おなかすいてるならチョコあげる



教室内は騒がしくて、チョコレートの甘い匂いがする。


自分の席について、二列向こうの席にいる西山くんを見た。


ちょっと丸まった背中。

まっくろなマフラー。

大きな藍色のリュックサック。

寝癖のついた黒髪。

西山くん。西山昭(アキ)くん。



私、神木柚の、好きなひと。








去年の、秋のはなし。



調理実習で、カップケーキ作って。

教室で、他の班の子達と交換しあったりして。


私もクラスメイトの女子に誘われて、その輪に混ぜてもらえた。


私はお菓子作りが趣味で、私と同じ班になった子に『作るの上手い』なんて褒められたりして、ちょっと浮かれてた。


『神木さんと一緒の班、いいなぁー!なんかここだけクオリティ違うじゃん!』

『ねね神木さん、交換しない?神木さんの班のやつ、すっごい美味しいって評判なんだよ~』


なんて言われて、嬉しくて。

思わず、えへへと笑った。