おなかすいてるならチョコあげる



迷った。


だけどそんなためらいは一瞬のことで、気づけば私は、鞄の中に手を突っ込んでいた。




「西山、くん」


呼ぶと、彼はゆっくりとこっちを向いてくれた。


鞄からそっと、箱を取り出す。

ゆっくりと、彼のもとへ歩く。


大丈夫かな。精一杯きれいにラッピングしたつもりだけど、崩れてないかな。


どうでもいいことを考えながら、私は西山くんの前に立った。



「...あ、あの。作り、すぎちゃって。いくつか、余ってて.....だから.....」



きれいな黒い瞳が、私を見てた。

まっすぐに、私だけを、見てた。


頭の奥が熱くて、よくわからないけど、喉がつまった。

震える手で、私はそれを差し出した。




「おなかすいてるなら、あげる」




君に、あげる。

そのためにつくったもの、だから。