水の能力者に詳しいというロイと向かった

ところは、ひとつの小さい本屋だった。

店に入ると、円状に並んだ本がしきつまれ

ていた。



「・・・すごい本の数だな」


本のあまりの多さにロンは呆気にとられ、

その場で呆然としていた。

その様子を見たタインは、本棚を眺めた

後、一冊の本を指差し、言った。


「あの本が水の能力者について記されてい

る本か?」


ロイは驚きながら口を開く。


「そうですよ、びっくりだな~詳しいんです

ね。どこで聞いたんですか?」

「・・・教えてもらったんだ」


タインはいじけた子供の様に言った。

ロンは、そんなタインの様子を不思議に思

っていた。


「よかったら、その本俺達に見せてくれな

いか?」

「もちろん!いいですよ!」


ロンの言葉に、ロイは嬉しそうに言った。


「では、僕があの本を取ってきますね」


そう言うと、子供の様に、無邪気に走って

行った。

再びタインと二人きりになってしまったロ

ンは、タインに小さく話しかけた。



「・・・なぁ、タイン」

「なんだ」


返ってきた言葉は、不機嫌で今にも爆発し

そうな雰囲気を放つ声だった。

ロンは、思わず話すのをやめようかと思っ

たが、タインの話の続きが気になるので続

ける事にした。

恐る恐る声をかける。


「・・・さっき、ロイがどうとか言ってた

じゃないか、ロイが、どうしたの?」

「その事はもういいのだ、いずれわかるこ

となのだ」


タインは、疲れたかのようにため息をする

と、本屋の隅にある椅子に腰を掛けた。

ロンは、不思議に思ったが、何も言わずタ

インの様子を見ていた。

タインからおおきな本棚に視線を移すと、

ハシゴに乗ったロイの姿があった。

どうやら、その水の能力者についての本は

本棚の一番上にあるらしい。

ハシゴがガタガタと震えている。

今にも倒れそうな勢いだった。


「・・・あと少し」


ロイは、手を伸ばし、本を取ろうとした。



その時、



クラっ!!


「・・あっ!」


「危ない!!」


ロイが、ハシゴからバランスを崩し落ちた

のを見たロン達は、ロイのもとへと走りだ

した。


階段を登り、先に進むと、ロイが倒れてい

た。


「ロイ!大丈夫か!?しっかりしろ!」


「・・・・っ・・!」


ロイの意識は薄く、ぐったりしていた。

ロンは、静かにできる所に連れて行く為に

ロイを抱きかかえると、綺麗なブローチが

目に映った。


「・・・これは・・・?」

「やっぱりな・・・」


何かに確信を持ったのか、タインが唸っ

た。


「どうしたんだ?タイン」


ロンはロイを運びながら言った。

タインはロンの言葉には反応せず、一人唸

っていた。

階段を降り、タインが座っていた椅子に横

にさせると、タインが口を開いた。


「こいつの正体がわかったのだ」

「正体?それは、普通の男の子だろ、なに

言ってるんだ、タイン」


ロンは、当然と言うようにタインに言う。

それを聞いたタインは、ため息をし、真剣

に口を開いた。



「違う、こいつは普通の男の子ではないの

だ。こいつは――――」


タインは一息溜めて再び口を開く。


「水の能力者だ」