「おい、タイン…」



ロンが呆れながら、チョウを捕まえようと

している少女、タインへと投げ掛けられ

た。


「うるさい、黙っているのだ」


黒いメイド服風のロングスカートに、同色

のブーツ、頭には白いリボンのカチューシ

ャという可愛らしい外見から、想像も出来

ない言葉に、ロンは思わずため息をついて

しまった。


彼女の名は、マラニヤ・タイン。

古来マラニヤ大家の生き残りだ。

マラニヤ家は、代々大地を操る能力を持っ

ている。

しかし、彼女の兄にあたる、マラニヤ・ラ

イトという人物が、力をもてあましマラニ

ア家のほとんどが亡くなってしまった。

その出来事があってから、彼女は、その身

分を隠し、ロンと旅をしている。

もちろん、ロンはその事を知らない。


「おい、ロン」


タインが、ロンに拗ねた顔で言う。


「…どうした?」


ロンは、なにか嫌な予感がすると心の中で

思いながら口を開く。

タインは、どこか悔しそうに、頬を赤くし

て言った。


「……あのチョウチョ、とって………」


そう言うと、広い草原のタイン達から離れ

たところに、黄色い蝶が止まっていた。

彼女は、いじっばりな反面ツンデレ、負け

ず嫌い。

(…やっぱり……)

ロンは、クスクスと笑いながら答える。


「……なぜ笑うのだ」


「別に、なんでもないよ」


ロンは、そう言いながら、静かに蝶のもと

へと忍び寄る。


「………慎重にな…♪」


タインは、小さく言った。

その声には、期待と楽しさが混じってい

いた。


「……よっと…」


ロンは、蝶の羽をトンとつまむと、タイン

に渡した。

タインは嬉しそうに受けとると、持ってい

た小瓶に蝶を入れた。


「わぁ~、ありかとな♪ロン!」


ニコッとタインは微笑んだ。


「あぁ、よかったな!」



その様子を見て、ロンも微笑んだ。

そして、ロンは前から不思議に思っていた

ことを口にした。


「…なぁ、タイン、タインはなんで能力者

達を探してるんだ?」


ロンの質問にタインは、微笑みを不満顔に

変え、ロンを睨み付けた。


「………別にいいだろ、ロンには、関係のな

いことなのだ」


「……タイン…………?」


ロンは、なにか隠してるような気がして、

タインのことが心配だった。


「……でも、見つけなきゃいけないんだ、見

つけなきゃ……」


タインはなにかに焦っているようだった。