「…うっ、うぅ…」
「・・・・・」
一人の少女が静かに、その場に座り込みな
がら泣いていた。
少女のそばには、心配そうに、しかし悔し
そうに見守る青年が立っている。
二人の間には、一人の女の人が横たわって
いる。
「…マラッ……マッ……ッ」
少女が声を震わせる。
しかし、マラという女の人は目を覚まさな
い。
「…行こう、タイン…」
青年が静かに口を開く。
その声は小さく、よく耳をすまさないと聞
かないと聞こえないほどの大きさだった。
青年の声を聞いた、タインという少女は、
下にうつむき、奥歯を噛み締め、言った。
「…許さない、絶対に……!!!」
辺り一面灰色で、なにもない。
そんな中、タインは悔しそうにしている。
今、タイン達の前に横になっている女の人
----マラは、タインにとって姉のような存在
だった。
彼女は、とても優しく、とても綺麗で、す
ごく強かった。
彼女の細剣を振るう姿は、水の流れのよう
になめらかで、優雅な姿だった。
それだけは、誰にも負けないはずだった。
なのに………
『タイン!あぶない!!』
なのにーーー!!!
「……必ず、必ずあいつらを……!!」
ゴオォォォォォーーー……
タインが声を荒げるのと同時に、地震が発
生した。
「うわっ!……タイン!ダメだ!!」
青年が叫ぶ。
それを聞いたタインは、我に返り、静かに
言った。
「………行くぞ、ロン」
タインは、マラの姿を眺めながら言う。
ロンという青年は、その様子を見て悔しそ
うに歯を食いしばった。
これは、タインという少女とこれから出て
来る能力者達の物語。
時に悲しく、時に楽しく。
タイン達の旅が、今始まる。