なんて言うんじゃなかった。確かにテレビが置いてある6畳のリビングは綺麗にしてあるし、その隣の畳の部屋も整頓できてある。


問題はキッチンとお風呂場。信じられないくらいガスコンロと換気扇が汚れてある。

お風呂場なんて後から浴槽を取り付けたのが目に見えた構造だし、寮とはいえもう少しなんとかしてあげてほしい。



「おつかれさまでした。あの汚いところは見ないようにしていたので助かりました」



徹底的に掃除を終えると、汚いキッチンもお風呂場も見違えるように綺麗になった。でも、構造はどうすることもできないけれど。


そのご褒美にと私に労いの言葉と用意してくれた麦茶。働いた後の麦茶は格別。それにしても今が秋で良かった。


真夏なら5階まで階段なんて汗だくでヤバかったに違いない。



「ごちそうさま。それにしてもこの寮、もうちょっと住む人に優しいものにしてほしいね」



「来年には取り壊す予定なんですよ。老朽化が激しくて」



「そっか。そのほうがいいよ。でも、それなら引越ししたりするの?」



「そうですね。その予定です」



「そっか。ねえ、そうだそうだ。せっかくだし、お昼一緒に食べようよ。スーパーで買い物して。私、食べたいものがあるんだ」



最初は嫌そうな顔を浮かべていたけれど渋々と了解してくれて私たちは二人でスーパーに買い物に出かけることにした。