夢想曲ートロイメライー


「……どういう意味でしょうか?」

なるべく怒りを出さないように静かな声を出した。

「そのままの意味だ。女が学問などしても役に立たん。家に帰って縫い物でもしていろ」

思わず机を叩いて立ち上がる。

さすがに今の台詞は聞き捨てならない。

そもそもこの人、初対面なのにどうしてそんなことを言うのだろう。

縫い物だって、結構大変なのに。

言い返してやろうと口を開きかけた時、襖が開いた。


襖を開けて入って来たのは松陰先生。

先生は私達に気づくと笑顔を向けてくれた。

「おや二人共、随分と早いのですね」

先生が来た途端、彼は先生に頭を下げて講義室を出て行ってしまう。

「夕霧君、久坂君と何を話していたのですか?」

「……いいえ、何も」

結局彼は他の塾生達が来るまで戻って来なかった。

最悪の出会いだった。