私が入塾した日は彼は休みだったようで、顔を合わせたのは次の日だった。
思ったよりも早く塾に着き、まだ誰もいなかった。
先生が来るまでと思って本を読んでいた私。
「誰だ、お前」
そんな言葉と共に目の前に影が落ちて、顔を上げると大柄で坊主頭の青年がこちらを見下ろしていた。
それが久坂さん。
慌てて頭を下げる。
「昨日から入塾しました、和泉夕霧です。よろしくお願いします」
顔を上げても彼はにこりともせずにこちらに鋭い視線を投げ続けたまま。
……ちゃんと立って名乗るべきだったかな。
そんな事を考えていると彼は不意に吐き捨てた。
「女は邪魔だ、さっさと帰れ」
途端に自分の眉間に皺が寄ったのが分かった。
